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2011 12,25 22:41 |
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インテ発行予定『L'elisir D'amore』のサンプルです。
らんま的に男女が入れ替わっちゃう臨也がシズちゃんの恋に協力するドタバタラブコメ・・・・になるつもりでした。 もっとドタバタしたかった。 シズイザ、R-18です。 東京初売りは1/29のシティの予定です。 クリスマスだから何か小話をと思ったのですが、 おたくにくりすますなどかんけいないのです!! それにしても、シズちゃんが相談って何だろう。 廊下からリビングに移動してしまって、断片的な声しか聞こえない。 気になった俺は、ベランダから2台のパソコンが設置されている部屋へ移動する。住人二人のコミュニケーションを図るための部屋だと直ぐに分かった。 リビングの隣に位置するため、声が良く聞こえる。 「まぁ、座って・・・・・どうしたんだい?」 「・・・・臨也の奴が来てたのか?」 「っ!!」 思わず出そうになった声を、口に手を当てて抑える。 「えぇ?何でだい?」 「匂いがする」 出た、臭い。野生生物かっつーの。 「数時間前にはいたんだけどね。まさか、残り香なんて言わないでくれよ?」 冗談っぽく新羅が言う。彼にとっても、俺がここにいるのがばれて、家具を壊されるのは避けたいだろうし、全力で誤魔化して欲しい。 「いや、今ここにいるような匂いだ」 え、何なの、この人・・・・ちょっと怖いんですけど。 本当は俺がいるのを知ってるけど、惚けて油断させておいて、いきなりこのドアを開ける気かもしれない。ベランダから逃げた方が良いかな。 移動しかけて、止める。シズちゃんにそんなカマが掛けられるかと考えると、まず無理だろう。一発で顔に出るタイプだから。 「うーん、僕には分からないなぁ。数時間前の臭いまで嗅ぎ分けるなんて、君の身体はやっぱり興味があるよ。一度、解剖させて欲し、ぐぁっ!」 ゴッと鈍い音と新羅の押しつぶしたような悲鳴が上がる。デコピンでもされたのだろうけど、あの音はデコピンの音じゃない。鈍器で殴られた音だ。指であの音って、どこまで規格外なんだよ。 「いてて・・・・で、今日はどうしたんだい?」 暫しの沈黙の後、シズちゃんが小さな声で、相談があるんだけどさ、と前置きする。 考えて発言するのが苦手なシズちゃんが言い淀むなんて、よっぽどの事だろうか。 好奇心が擽られて、ドアの隙間から覗くと、シズちゃんの後姿が見える。相変わらずのバーテン服。仕事帰りかな。 シズちゃんは珍しく、たっぷり三分は逡巡して、覚悟を決めたように顔を上げる。 「紹介したい女がいるって、言われて」 一瞬の静寂の後は、大騒ぎだった。そりゃ、そうだ。俺も同じ空間にいたら一緒に騒いだもん。 「えぇ!?誰にだいっ、て言うか、どんな人だい!?」 運び屋は俺に披露した以上の速さでPDAを操る。二人のテンションは鰻上りだ。 代わる代わるの質問攻撃に、シズちゃんは戸惑いながらもポツポツと語り出した。 「トムさんの知り合いって話で・・・・って言っても顔見知り程度らしいんだけどな。俺を見かけて紹介してくれって言って来たらしい・・・・・・いや、俺は見てねぇから知らねぇ」 今の所、シズちゃんは相手を認識すらしていないのか。 「トムさんの知り合いだと断りづらくてさ」 何故断る前提なんだろう。化け物じみたシズちゃんが女性に好かれるなんて、千載一遇のチャンスかもしれないのに。あ、一目惚れなら、彼女はシズちゃんの怪力を知らない可能性があるな。ばれたら振られるだろうけど、会ってみたら良いのに。 その意見は新羅に代弁された。 「会うだけ会ってみれば?良い人かもしれないよ」 運び屋も頻りに頷いて加勢する。 「いや、会っちまったら余計断りづらいだろ。相手にもトムさんにも失礼だ」 新羅と運び屋が同じ方向に首を傾ける。 「静雄君。そもそも何で断る前提なんだい?もし、力のことを気にしてるんなら、最近少しずつコントロール出来るようになって来たんだろう?俺はもう、大丈夫だと思うな」 「ああ、そうなんだけどよ・・・・」 煮え切らないシズちゃんに、運び屋の変形ヘルメットが、今度は反対側に傾ぐ。 迷いながらキーボードを叩く姿は言おうか言うまいか悩んでいた。 意を決したようにPDAを見せると、シズちゃんは5秒ほど考えた後、ああ、と頷いた。 運び屋が、新羅からプレゼントされたと言うPDAを取り落とし、ゴトンと鈍い音が静寂の部屋に響き渡る。 何を驚いているんだ? 「えええ!?静雄君、好きな人いるの!?初耳だよ!」 えっ!?俺も初耳なんですけど! 新羅の言葉に俺も驚く。 これでは新宿随一の情報屋の名が廃る。 高校時代からずっと喧嘩をする腐れ縁で、それでも最近、少しは世間話をするようになってお互い成長したなぁ、なんて思ったり、新羅やドタチンがいれば明け方近くまで飲むような仲になったのに、その誰にも言わないなんて。 シズちゃんに隠し事なんて無理!と侮っていただけに衝撃の事実だった。 「あー、好きだって気付いたのが最近だからな」 シズちゃんは天井を見上げて、他人事のように言う。 運び屋が何かを打っているが俺から見えないのがもどかしい。 「あ、私も興味ある。最近気付いたって事は前から知り合いだったって事だろ?」 相手は誰だとか聞いたのかな。直球だな、運び屋。まぁ、中高生じゃないし、今更照れる年でもないか。 「・・・・言いたくねぇ。叶わない相手だし、俺もあいつに言うつもりないし」 あ、ここに中高生がいたか。成人男性が何、照れてんだ。 いっそシズちゃんらしい反応に呆れ半分、安心半分する。恋愛に関して、純情だからなぁ。 運び屋が叱咤激励を打ち込んだPDAを見せると、新羅も頷く。 「そうだよ、諦めるなんて静雄君らしくない。田中さんなら、他に好きな人がいるっていったら上手く断ってくれるだろ。私は子供の頃からセルティを諦めたことは一度もなかったよ」 二人の励ましに、シズちゃんはあーとか、うーとか、訳の分からない唸り声を上げる。 「でもなぁ。俺の言葉は通じねぇんだよな」 俺の頭に真っ先に浮かんだのは、シズちゃんと仕事をしている奇妙な日本語を話すブロンドのロシア娘だった。 通じてないって事はないだろうけど、難しい日本語を使う相手の言ってる事は、シズちゃんの残念な語彙力には多少難解かもしれない。でも、フィーリングやその場の状況で分からないって事はないと思うんだけど。 新羅と運び屋も、俺と同じ人物を思い描いたらしい。 「言葉の壁は乗り越えられるよ。現にセルティが日本に来た時、彼女は日本語を全然喋れなかったけど、今じゃ非常に流暢だ。僕がそうしたように、静雄君が教えれば良いんじゃないかな?」 運び屋も頷く。首を盗まれると言う突発的な事故のせいで、仕方なく何の準備もなくアジアの島国に旅立ったことを賢明にも黙っている。 「そっか。そうだな。トムさんには断って貰う。それで、俺はあいつに告る」 シズちゃんが決心したように力強く言う。まるで自分自身を励ましているようだ。 ツキンと痛みが走る。針で刺されたような小さな痛みには覚えがあって、シズちゃんに助けられた時に感じた痛みと同じだ。しつこい痛みがどこから来るのか分からず、自分の身体を見下ろす。お腹が痛いのかと、手を当てるが何ともない。次に胸に手を当てる。心臓の鼓動が手を伝わってくる。痛みも、そこから発生していた。 薬の影響か、急に胸が大きくなった成長痛のようなものだろうか。胸以外は痛む箇所はないから、大した事はないんだろう。 結論を出して気が軽くなったシズちゃんがトイレに立った隙に、部屋から出る。 「新羅、ちょっと胸が痛む時があるから、近いうちに往診頼むよ」 新羅の今診ようと言う申し出を断る。臭いがすると平然と言う奴だ。女になっていても安心出来ない。 「セルティ、静雄君が戻って来ないうちに頼むよ。じゃあね、臨也。身体に変調があったら直ぐ連絡するように」 俺は頷いてバイクに跨る。アクセル音の代わりに低い嘶きを立て、バイクは滑るように走り出す。 玄関のドアが閉まる直前に「あれ、今の」とシズちゃんの声が聞こえた気がしたが、気のせいにして、運び屋の背中にしがみ付いた。 (本文P.26~29より抜粋) 風が吹いて首を竦めると、マフラーに鼻先が埋まる。これ以上俺に関係ない話を続けるなら、このマフラーに鼻水つけてやろうか。 「俺さ、好きな奴がいて、でも俺の言葉はいつも伝わんねーんだよ。なぁ、何て言ったら伝わる?」 思いの外、真剣な声に首を横に向けると、シズちゃんは俺を見ていた。 そんなの知らない、と突っ撥ねるには、その目は真剣で、何かを訴えかける。でも、俺にはその何かが分からない。人の気持ちなんて、手に取るように分かるのに、シズちゃん相手だと分からなくなる。ピースの足りないパズルをずっとやってるようだ。 「・・・・シズちゃん」 胸がチクッと痛む。おかしい。今は女の体じゃないのに。今まで胸の痛みは女の時だけ起きたのに。 互いに目を反らすタイミングを失したと言うか、見詰め合ってると、携帯が鳴って二人とも無様に大きくビクつく。 「シズちゃん、ケータイ鳴ってる」 言うと、シズちゃんは舌打ちして、ポケットから携帯を取り出す。ディスプレイを見て低い声で唸った。一言、俺に断ってから出る辺りは律儀だ。数回、返事をすると、携帯をまたポケットに仕舞う。 「悪ぃ。仕事に戻んなきゃなんねぇ」 「そう」 胸の痛みは消えていた。冷たい空気を吸って肺が痛んだんだ、きっと。 「さっきの答え。好きだ、って言えば良いだけだ」 立ち上がったシズちゃんを見上げて言う。それが一番君らしい。 冬の夜は早く訪れる。街灯の点いた公園に、シズちゃんの金髪が照らされる。それが眩しくて、目を細めた。 俺からは逆光になってシズちゃんの顔が良く見えないが、目は俺をじっと見ているのを感じた。 「・・・・好きだ」 ふいに言われた言葉は軽やかなメロディーを伴って俺の耳に届く。広場にある劇場でコンサートが始まったのだろうか。音漏れするようなちゃちな造りじゃないのに、そんな事を思う。 「そうか。それで、伝わるのか」 続いた言葉に、ふっと息を吐いて初めて、自分が息を詰めていた事を知る。 「日本語が分かれば伝わるでしょ。それ以外解釈のしようがないんだからさ。それより急がなくて良いの?」 シズちゃんが、この上なく穏やかな笑みを浮かべた気がして、居た堪れなくなってわざと急かす。 慌てて公園を出て行く後姿を見て気付く。 「あっ!マフラー!!」 俺は自分の首に巻かれたマフラーを取って振り回す。既に、公園から出ていたシズちゃんが振り返る。 「明日で良い。明日の夜、俺んちに返しに来い。あ、さっさと帰れよ。ぶらぶらしてんの見たら殺すからな」 「はぁ!?何調子に乗ってんの!?」 憤慨した声は、星が瞬き始めた空に吸い込まれた。 (本文P.61~62より抜粋) PR |
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