うめぼしの種
ヲタクの生態、日常のこと、色々。 現在デュラララ(シズイザ)、進撃の巨人(エレリ)にハマリ中。MOEの続く限りゴニョゴニョと。 BLにご理解ない方はお戻り下さいませ。
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2012
12,23
14:13
C83サンプル
CATEGORY[off]
C83のサンプルです。
何事もなければ新刊あります。
オマケにチロルチョコを作りました。
新刊SWEET×SWEETの表紙を描いて下さったきりさきさんのイラストです。
届いたとき「かっわいいな~」と一人盛り上がってました。
お買い上げ下さった方にお付けしますので、貰って頂けると嬉しいです。
結構あるので、皆様にお渡し出来ると思います。
東3 ク28b 【うめぼし】 でお待ちしております。
宜しくお願い致します。
※当サークルの配付物は全てR18です。年齢を確認させて頂くことがありますので、年齢の分かるものをご持参下さい。お手数をお掛けしますが、ご協力お願い致します。※
新刊
・SWEET×SWEET P.100 ¥900
・4つと1つの季節 P.70 ¥600
既刊
・~if~ ¥800
・Doppelganger ¥800 (残部少)
・真夜中と真昼の夢 ¥600 (残部少)
・Lilium Candidum ¥300
・すきになってもいいですか ¥600
・Rerecoding ¥900
←オマケのチロルです。
以下サンプルです。
サンプル1 【SWEET×SWEET】
甘い香りとほろ苦い香りが入り交じり、街路樹で囲まれた広場は口コミで広がりつつあった。
正確にはその広場に対峙するように建つ、白と黒の相反する2軒の建物が話題になっている。
目にも眩しい白い外壁は、大きなガラスが嵌め込まれて光をたっぷり取り込む造りになっていた。
甘い香りの正体を突き止めようと、その透明度の高いガラスから中を覗けば、ショーケースに整然と並ぶのは色鮮やかなスイーツ。
その宝石を並べたようなケースは店の前を通る人々を魅了し、足を止させるのに十分な輝きを放っていた。
一方、木立に囲まれた広場を隔てて斜向かいに屹立するのは、漆黒の外壁の戸建て。
スタイリッシュな外観と落ち着いた風格は大人の香りを漂わせていた。
ガラス扉を押し開けると、一層強く豊かに香るコーヒーの香り。
店内は思った以上に広々としていて、客席は隣席の声に自分の空間を邪魔されることのない間隔が取られている。
カウンター越しの棚には様々なリキュールや蒸留酒などのボトルがオブジェのように並んでいた。
これは、そんな2軒のお店で働く二人の若者の物語。
静雄は明日から自分が働く店を外から眺めていた。
こじんまりとした規模の店は、お世辞にも接客上手と言い難い自分にはぴったりだと思う。
たくさんの客が来ると、その分変わった客も多くなる。
そう言う相手に冷静に対応出来る性格じゃないことは自分が一番良く分かっていた。
子供の頃は、きっと大人になったら怒りに我を忘れることもなくなるだろう、と漠然と思っていたが、成人して数年経った今はもはや希望的観測でしかなかったと悟る。
理不尽なことは勿論、変に理屈っぽいことを言われると我慢出来ず、腹の底からマグマのように怒りが沸いてくる。
爆発も早ければ、冷めるのも早い。
しかし、いくら早くても、起こしてしまったことをなかったことには出来ない。相手が悪くても客商売であればこちらが折れなければならないことも多く、納得のいかない静雄はその度に次の職を探すハメになった。
そして、求職中の静雄に声を掛けたのが、中学時代の先輩の田中トムだった。
バールをやるから働かないか、と有難い申し出を受けたとき、当然のことながら躊躇した。
まず、『バール』と言う単語に馴染みがなかった。
聞くと、日中はカフェ、夜はバーになる店のことらしい。バーテンダーの経験のある静雄に夜、店に立ってくれないか、と打診が来たのだ。
確かに経験はあるが、接客業は不得手でいつか切れてトムに迷惑をかけることになるんじゃないか、と危惧して二の足を踏んだ。
学生時代、何の縁か、可愛気のない静雄を心配し、気にかけてくれて、恐らく学校で一番親しくしていたトムは静雄の性格を熟知していて、静雄は黙ってシェーカー振ってくれりゃ良いから、と笑いながら後押しした。路頭に迷う後輩を見ていられなくなったのもある。
加えて、他の従業員は静雄とトムの後輩のヴァローナと静雄の弟の幽と言うから、自分にはもったいないくらいの環境だと思い、宜しくお願いします、と頭を下げた。
そして、明日に開店が迫った今、静雄は困ったことになった、とため息をつく。
静雄の自慢の弟、幽は舞台俳優をやっている。
最近、注目され始めて、舞台の方が多忙になり、バイトでカフェに入ることになっていたのだが、先日舞台を見た芸能プロダクションの社長が幽に惚れ込み引き抜きを掛けてきた。
幽は、次のバリスタが見つかるまでは断る、と言っているが、弟の実力を知っている兄としては、すぐにでも芸能界に入って成功して欲しいと思う。それだけの実力があるのだから。
そうすると、どこかからバリスタを探してくるよりも、自分が練習して、日中はカフェ、夜はアルコールをメインにして店に立つのが最良に思えた。
急遽訪れたチャンスに、兄弟揃ってトムに相談したのが一月前のことだ。
静雄の考えを提案したら、幽は、俺は俳優をやりたいだけだからメディア媒体は何でも良いんだよ、と言ったが、せっかくのチャンスをみすみす逃すのはもったいない。
取りあえず、トムさんに相談しようぜ、とまるで三者面談の装いになった。
「おお、そうか!そう言うことなら俺も応援するぞ。しかし、随分大手の芸能プロの目に留まったもんだ」
二人の話にトムが頷きながら、それだけのオーラがあったってことだよな、と言う。その大手芸能プロダクションが俳優・羽島幽平を売り出したことにより、他の追随を許さない超大手に変貌するのは、そう遠くない未来の話であることを、勿論この場にいる誰も知らなかった。
「ありがとうございます。兄貴が慣れるまではお世話になります」
ぺこりと頭を下げた幽の丸い後頭部を見て、静雄も慌ててそれに倣う。
そして、こいつの夢を応援するためにも早く慣れないとな、と決心したのだった。
くどいようだが、それが一ヶ月前の話。
オープンまでの一ヶ月。基礎から学んで、幽の手が空いているときは、付きっきりで指導して貰ったが一向に上達しない。犠牲者と言う名の試飲者は3名の同僚たちになる。
3名は口々に言う。
「味もさることながら、香りも苦いよ」
「アメリカン・・・・・・にしちゃ薄すぎんだよなぁ」
「私は猫のラテ・アートを希望したのですが、これはいびつな猫型ロボットですか?」
三者三様だが、総じて良い評価は得られなかった。
静雄はサイフォンを睨む。
最近のコーヒーマシーンは優秀で、数秒で香り高く味の良いコーヒーを作るが、コーヒーは手挽きに限ると言うのがトムの上司、つまり社長の言い分だった。
それに、例えマシーンで煎れたコーヒーでもラテ・アートを希望されれば描くのはバリスタの役目だ。練習は余儀なくされる。
そして練習したが惨敗。心はばっきばきに折れて、上達しない自分に腹を立てて、トムや幽に宥められる日々。
それがここの所の静雄の毎日だった。
悩みが尽きぬまま、開店が2日後に迫った艶消しのされた漆黒の外壁に手を伸ばし、その質感を確かめるように撫でながら、首だけを捻る。
その先には太陽の光を集めた白壁が目映いばかりに輝いていた。
大きなガラスには開店前を告げるロールカーテンが引かれていて、中の様子は見えない。
昨日、開店に向け準備していた総従業員3名に、この広場ってジンクスがあるらしいぜ、と言ったのはトムだった。
「同じ時期にオープンした店は潰れるってよ」
苦笑しながら言うトムに、ヴァローナ首を傾げる。
「それは競合他社で排除し合うと言う意味ですか?あの斜向かいの店舗はその類ですか?」
その時、静雄たちの働くバールと相反するように屹立する純白の建物は、どのようなサービスを提供する店舗か誰も知らなかった。
大きなガラス窓はカーテンで覆われ、看板も出ていないから諮りようがない。
「どうだろうなぁ。あそこは何の情報も流して来ないからな」
「外装から言うと、女の子向けの雑貨や洋服屋って言うところでしょうか」
休憩用のコーヒーを人数分淹れた幽が話に混じる。
外からも良く見えるショーウインドウに綺麗に着飾ったマネキンを一列に並べて、その洋服にあった装飾品を店内の随所に配する。良くあるショップの出来上がりだ。
皆、それぞれ、あれはどうだ、これはどうだと憶測を膨らませる。
「静雄は?お前、何だと思う?」
トムに水を向けられて、静雄はコーヒーの水面から目を上げる。
正直、どうでも良かった。
今は、他の店に構っている余裕はなかった。どうやったら幽のような味が出せるのかを考えていた。ミルクと砂糖をたっぷり入れて、もはやコーヒー牛乳になった白褐色を見て、それでも想像をする。
「・・・・・・そうっすね。花屋、なんてどうっすか?」
光をたっぷり取り込むガラス越しに広がる極彩色。緑に包まれた景観は、広場をぐるりと囲む街路樹と溶け合って好相性に思えた。
「へぇ、その発想はなかったな」
感心して呟くトム。
「先輩の想像力は、私のそれを凌駕します」
当たったわけでもないのに、二人に褒められて連日の失敗で知らずに疲弊していた静雄の気持ちは、少しだけ上昇してその日一日を過ごした。
ここ数日、最後に帰るのは静雄になっている。
髪を金髪に染めて、サングラスを愛用している彼は勘違いされがちだが、真面目な性格で、一度決めたことは覆さない。
一日でも早く周りを安心させようと最後まで残って練習を重ねていた。
今日も一人で練習に没頭していたが、気付けば辺りはすっかり暗くなっていて、慌てて帰り支度をする。
鍵を掛けて、夜空と同じ色をしたドアの前で凝りを解すように肩を回し、咥え煙草に火を点けた。数時間振りの煙草が酷く美味い。
その場からサークル状の広場を見渡す。改めて見ると色んな店が建ち並んでいる。静雄の勤めるバールの二階だって、別の店舗のバーが入っている。こっちの方がよっぽど商売敵だ。
そんな思いを持ちながら、一日の疲れを癒すため、ぼーっと広場を眺めていると、今までになかった変化に気付く。
斜向かいの店に明かりが点いている。相変わらずロールカーテンは引かれているが、その隙間から柔らかな明かりが漏れていた。
渦中の店に明かりがついてれば気になるのは当然で、静雄は引き寄せられるように近付く。
カーテンの僅かな隙間から背骨を捻るような変な姿勢で覗いてみると、中はがらんと広く、中央に大きなガラスの立方体が鎮座していた。あまりにもピカピカ光っているものだから、クリスタルガラスの塊かと思ったが、どうやらショーケースらしい。
バールにもコーヒーのお供にケーキや焼き菓子をショーケースで置くつもりだが、こんなに輝きを放ってはいなかった。
(何だ、ありゃ。ダイヤモンドでも飾るのか?)
あんなに光を反射しているケースに並べるのに相応しいのは、宝石類しか思い浮かばない。
まだ改装中のせいか、他には何もなく、人の気配もしなかった。ただ、明かりだけが煌々と灯っている。
もしかしたら、見えない奥の方にいるのかも、と鼻先がガラスにくっ付きそうになるほど身を乗り出すが、それ以上のものは見えなかった。
結局、何の店かも掴めないまま窓ガラスから離れる。変に捩じった背骨を伸ばしていると、目の端に何か映った。首だけを右に捻ると、つい先ほどまでの静雄と同じ姿勢をした男がいた。
カーテンの僅かな隙間から中を覗いている、闇に紛れそうな全身黒い服の男。今時、珍しく染めていない髪まで漆黒。
全く気配を感じなかった静雄は、びっくりしすぎて声も出せずに男の白い横顔を凝視する。
(何だ、こいつ)
それが静雄の率直な感想だった。
静雄の視線に気付いた男は、屈めた腰を真っ直ぐに伸ばす。やけに姿勢の良い立ち姿だった。
「なに?」
夜だと言うのに、彼の周りだけ天然光が差し込んだような、朗らかで柔らかい声だった。
彼の行動を考えれば、臆することなくそんな声で静雄に話しかけている場合じゃない。いくら公共の場に構えた店であってもオープン前で、夜遅くに、しかも覗き見ともなれば不審者だ。
さっきまでの自分の行動を棚に上げて静雄は思う。
関わらない方が良い、と。
そう決心したのに、男は勝手に喋り出す。
「君が熱心に覗いてたから、何が見えるのかなと思ってさ。俺には魅力的なものは見えなかったけど、君の目にはどう映ったのかな?あ、答えてくれなくて良いよ、これが感性の違いってやつだから」
行きずりの静雄にまるで以前からの友達のように質問して来るかと思いきや、一方的に喋る男に苛立つ。
(やっぱり変な奴だ、関わり合いにならない方が良い)
その場を離れようとするが、その前に指摘される。
「俺を不審者だと思うのは勝手だけど、君も十分不審者だったよ?」
「べっ、俺はただ・・・・・・ここが何の店か気になっただけで・・・・・」
尻窄みに言い訳してから、しまった、と思っても遅い。普通に応えてしまった。
一人でベラベラ喋っていた男は、綺麗な山型の眉を上げる。
「おや、ちゃんと聞こえてたんだ。反応がないから大木にでも話しかけてるつもりになってたよ」
紡ぎ出される言葉が一々腹立たしいのは、無駄に良い声のせいかもしれないし、彼自身の性格のせいかもしれない。多分、両方だと静雄は思う。だって、面倒臭そうな顔してるし、と初対面の相手にして失礼なことを思うが、それは相手の言動も同じだから相子だ。
「うぜぇ」
それでも一言だけ出た言葉に睨みを利かせる。静雄が睨むと大抵の人は怯むが、男は堪えた様子もなくカラカラと笑った。
「ごめん、ごめん。今日一日引き籠ってたから誰かと話したくて、ついね。お詫びに良いこと教えてあげるよ」
不機嫌になった静雄が、別に聞きたくねーよ、と言う前に彼は口を開く。
「ここはパティスリーらしいよ」
聞いたことがあるような、ないような単語に怪訝な顔になる。男は、フランス語で粉類を使った生地で、とか色々説明を始めたが最後には5秒で済む、簡単に言えば洋菓子屋だね、と締め括った。
最初からそう言えよ、と恨めしげな視線を送る静雄に、男はふふっと軽やかに笑った。人を魅了する笑顔に、知らず顔が赤くなる。それを誤魔化すように一つ咳払いをして静雄は、洋菓子、と呟く。
「だったらプリンも売ってんのかな」
完全な独り言のつもりだった。
「プリン?さぁ、どうだろ。パティスリーって言うくらいだからクレームブリュレならあるかもね」
また訳の分からない単語が出てきた。察した男は補足をする。余計な一言を付けて。
「君は本当に何にも知らないなぁ。そうだな、表面カリカリ、中とろとろのカスタードプリンだよ。とろけるなんとか~とか流行ってるだろ。あんな感じ」
カリカリととろとろと言う擬音で表現されるプリン。何で固いのに柔らかいんだ、と静雄の頭には疑問符が3つほど並んだ。
「柔らかいのか・・・・・」
静雄にとってのプリンとは、卵と牛乳と砂糖を混ぜて蒸し固めたもので、とろけると謳っているのも美味いとは思うが、スプーンで掬った瞬間のあの頼りない柔らかさはちょっと残念な気分になる。
あからさまにがっかりしたのが伝わったのか、男は笑う。良く喋るし、笑う男だ。
「ははぁ、いわゆる、母親が作る系のプリンが好きなんだ、君は。幼い頃から慣れ親しんだ味は忘れられないし、最終的に美味しいと思う味だからね。他に惑わされない素朴な舌で良いと思うよ。うん、実に好い」
若干バカにされている気がするが、この短時間の会話でこう言う奴なんだ、と静雄は見抜いた。一言で言えば、うぜぇ奴。
「ありがとう。だんまりな一日だったから話せて楽しかったよ。じゃあね」
上機嫌を具現化した男は足取りも軽やかに去って行く。その後を追うように甘い香りが広がる。カスタードクリームのような、花のような、とにかく忘れがたい甘い匂い。
ひょこひょこ上下に揺れる肩と残り香が消える頃、漸く静雄もその場を後にする。
知らない奴とあんなに会話したのは初めてだ、と思い至ったのは家に着いてからだった。
サンプル2 【4つと1つの季節】
1 桜の時
高校一年春。
好きな人が出来た。
同い年、同じクラス。俺より頭一つ分背が低くて、真っ黒い髪には天使の輪がくっきり浮かんでいて、さらさら音がしそうだった。髪は真っ黒なのに他の色素は薄いのか、肌は白くて、珍しい赤茶色の目には常に慈愛と侮蔑が浮かんでいた。それはアイツのこの世界に対する嘘偽りない感情だと知ったのは、後々のことだ。
出会いは最悪。
視線を感じで見上げた先にいたアイツの第一印象は『嫌な奴』。
数十メートル離れた、口を利いたこともない相手に随分な言いようだと思われるかもしれないが、新羅の友人として「彼は折原臨也。中学からの、まぁ、一応友人だよ」と紹介された時の印象も変わらず『嫌なヤツ』。ただ、「一応ってなんだよ」と苦笑しながら不満を言った声は澄んでいて耳触りが良かった。
一貫した俺の印象は外れることなく、折原臨也と出会ったことにより自分史上最悪の1年を送った。
最初に放った俺の率直な一言がヤツの機嫌を損ねたらしい。
出会い頭に「気に入らねぇ」と言った俺に臍を曲げたアイツは、他校の不良どもをけし掛けることから始め、それは一月もすると池袋を徘徊するゴロツキにバージョンアップした。それでも埒が明かないと分かると自ら囮になってきな臭い方へ誘導することもあったから、相当俺が気に入らなかったのが分かる。
罠と分かっていても、あのちょこまかと逃げ回る後ろ姿を見れば条件反射で身体は動き、国家権力の世話になりそうになって慌てて引き返したことも数回あった。
ヤツの得意なナイフ捌きでダメになった服は数知れず。下手に理由を言って母親に繕って貰ったら余計な心配を掛ける。そんなわけにもいかないから自分でやって、この1年で裁縫のスキルだけは無駄に上がった。
それでも一日一枚のペースでどこかしら綻びる制服に、そのうち俺の手では追いつかなくなって見兼ねた門田が先輩のお古を調達してくれるようになったのは本気で助かった。
正直に言えば、臨也に出会わずに、どんなに大人しくしていても不良に絡まれるだろうとは思っていた。
ガキの頃から、異常な膂力とキレやすさで周りに脅威とされていたし、中学に入ってもそれは変わらず、それどころか不良の間では結構な有名人になっていて、俺を倒せば名が上がる的なステータスになっているのは、噂に疎い俺でも知っていた。全く、迷惑な話だ。
でも、大暴れした俺を見た大抵のヤツは怖がって二度と近付こうとしない。俺はキレると周囲の見境ってものがなくなる。視界が真っ赤に染まって、気付いたときには折り重なる気絶した奴らに怯えた周囲の目。誰だって巻き添えを食らうのは御免だから、賢明な判断だ。
興味本位で近付いてきても、豹変した俺を見て、掌を返したように避けるヤツに「ああ、またか」と思って諦めるくらいには慣れてしまった光景。
そんなときに現れたのがアイツだった。
俺がぶちキレて怪我をさせても翌日には何もなかったかのような顔をして俺の前に現れて、また同じような1日が始まる。
それがどんなに嬉しいことか、アイツには分からないだろう。友達とは呼べなくても、毎日同じ奴と顔を合わせてはじゃれ合いのまねごとが出来るなんて今までなかったことだったから。
だから、気が付いたときには好きになっていても全然不思議じゃなかったし、寧ろ、好きだと認めたその想いはストンと心の中に落ちてきた。
落ちて、定位置を占めた想いに俺は頭を抱える。
誰だ、恋をしたらいつもの風景が輝いて見えるなんて言ったヤツは。どこをどう見たらキラキラして見えるってんだ。バラ色どころか、俺の人生鉛色だぞ。
俺をからかってうろちょろするあいつが小動物みたいで可愛いな、とか、怒り狂う俺に新羅の背にぴったりくっついて盾にする姿に、何くっついてんだ、と新羅に嫉妬するなんて感情は理解出来ないだろう。そう、俺はよりにもよって、性悪でずる賢くてもの凄く綺麗な男を好きになってしまったのだ。何重苦だよ。絶望的だ。
だから、今のこの関係が壊れて避けられるくらいなら、黙っていようと決めた。悪意だろうが何だろうが繋がりがある現状で満足だった。
そして、臨也と出会って1年が過ぎた。
それは、たった一人に密かな恋をし続けた期間だった。
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