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2010 12,31 19:11 |
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今年も僅かとなりました。
DRにはまって萌を充填した一年でした。 冬のヲタクの祭典が楽しくて仕方なく、腕が千切れるじゃないかって位色々買い漁りました。 来年はもっと! こんな辺鄙なぶろぐさいとに来て下さった方、有難うございました。 良いお年をお過ごし下さい。 ↓ 年越しSSでっす いつも賑やかな池袋だが、今日はいつもと少々違った賑わいだ。
何せ今日は12月31日。大晦日。
新しい年を大事な人とカウントダウンイベントで盛り上がろうとする人々で道は溢れ返っている。
昼と夜の間でこれだけの人だ。夜になるともっと人でごった返すだろう。
そんな中を静雄は一人歩いていた。
どんな人混みでも静雄が通るとモーセの十戒の如くパッと人の波が割れる。歩きやすくて良いが、良い気分はしない。さっさと家に戻ろうと自然と足早になる。 今日も仕事だったが、年末年始はATMが使用不可だったり、本人が捕まらなかったりと思った以上に滞納金の回収が芳しくなかった為、早めの上がりとなった。
帰ったら年越蕎麦を食うかな。葱はあったはずだ。時間もあるし、スーパーで海老でも買って天ぷらを作るか。
そう思った時、携帯が鳴った。
さっき別れた上司からの呼び出しかも知れない。
表示を見ずに、出ると良く知った声がした。
「今どこ?」
名前も名乗らずに、不機嫌な声が詰問する。
「・・・てめぇにゃ関係ねぇだろ」
電話の相手は沈黙する。と、さっきとは打って変わって機嫌良さ気な声になる。
「あっそ。じゃ、帰る。シズちゃん良いお年を~」
静雄は慌てた。ここで意地を張っても良い事などないし、電話の相手・臨也が気になることを言った。
「待て!お前、どこにいんだ?」
「シズちゃんには関係ないでしょ」
・・・早速仕返しか。ガキかてめぇはと言いたいのをグッと堪える。以前は堪えるなんてあり得なかったし、この時点で携帯は粉砕されてたであろう。随分と耐性が付いたものだ。
「悪かったよ」
ましてや臨也相手に謝るなど、天地が引っくり返ってもなかったのに。
電話越しに臨也が笑ったのが分かる。案外機嫌が良いのかもしれない。
「シズちゃんが謝るなんて気持ち悪いな。ま、その謝罪に免じて教えてあげるよ。シズちゃん家の前。大晦日だし早く帰って来るだろうと思ったんだよ。でも帰ってないし、寒いし、もう帰ろうかな」
「もうすぐ着く」
「もうすぐって?3分?」
「・・・10分」
「10分も待ってらんない。凍えちゃうよ。帰る」
「あー、帰ったら蕎麦作ってやっから!」
臨也なら静雄が作る蕎麦より美味しいものを出す店を沢山知っているだろう。それに、食が細い彼を食べ物で釣るのは分が悪い。
さっき年越蕎麦の事を考えていたから思わず口をついて出た。
「海老天も」
意外な事に食いついてきた臨也に静雄は驚きつつも喜びを隠せない。
「海老がねぇ。スーパー寄ってくともっと遅くなるぞ」
「あるよ、海老とまいたけ。シズちゃんお金ないから安い海老になるでしょ。それだと俺が嫌だから買って来た。てんぷら作ってくれるなら、あとちょっとだけ待ってあげる」
その言葉を最後にぶつっと切れた携帯を見つめる。 「あげる」って何で上から目線だよと腑に落ちないものを感じつつも、静雄はすっかり暗くなった池袋を駆け抜けた。 臨也の持って来た海老は大きく、鮮度も良かった為、天ぷらにするのは勿体ないと静雄は主張したが、臨也の天ぷらじゃなきゃ食べないの一言で、2本を天ぷら、残りを刺身にする。2本って一人1本じゃないと文句を言っていた臨也だが、大人の掌より大きい天ぷらを見て満足そうな顔になった。
まいたけの天ぷらを揚げていると後ろから臨也が覗き込む。 「油が撥ねると危ないからあっち行ってろ」
「はいはい。あ、このアルコール持って行くよ」
冷蔵庫に鎮座していたビールとチューハイを手に居室へ消えて行く。
出来上がった二人分の蕎麦と海老の刺身を持って居室へ行くと、臨也は炬燵に入って机に突っ伏して背を丸くしていた。
「おい、起きろ」
「んー、起きてるよ。蕎麦蕎麦」
子供のようにはしゃぐ臨也の前に海老とまいたけの天ぷら、刻んだ葱を乗せた蕎麦を七味と共に置く。
「へぇ、意外!シズちゃん家ちゃんと七味あるんだ!しかも高級品だ。意外と美食家・・・ってことはないか」
いっつもファストフードばっかだもんねと臨也が言う通り、静雄が普段買う七味はスーパーで買う安い物だ。今、家にあるそれは先日京都でロケをした幽の土産に貰ったものだった。
入れ物も趣があり、その繊細な味を臨也はいたく気に入ったらしい。嬉しそうに蕎麦を啜っている。 静雄は完食すると、正面の器を覗き見る。臨也にしては珍しく半分以上食べたところを見ると蕎麦の味も及第点を貰えたらしい。
「炬燵って足は温かいけど、背中は寒いね。シズちゃん、俺のコート取って」
「自分で取れよ」
「嫌だよ。炬燵から出たくない。寒い。主に背中が寒い」
「俺も出たくねぇ」
「はぁ。炬燵入ると出たくなくなるってホントなんだね」
静雄は気になっていた事を聞く。
「そもそも何でうちなんだ?お前ん家の方が快適だろ?」
静雄のアパートは古い為、冷暖房の完備がされているとは言えないし、現在部屋の7割を炬燵が占めているから移動がしづらい。
「俺のとこ炬燵ないから。正月は炬燵に蜜柑って帝人くんが言ってさ。興味を持ったは良いけど、俺、炬燵使った事ないんだよ。で、俺の知り合いで持ってそうなのがシズちゃんだけだから来てみたら部屋のど真ん中にあるし。期待を裏切らないね、シズちゃんは」
臨也は寝転がると炬燵布団に肩まで入る。
「おい、寝るな。風邪ひくぞ」
臨也が頭だけを持ち上げ静雄を見る。
「シズちゃんが俺の心配してる・・・今年最後に変なの見た。今日で人類滅亡するのかな」
別にお前の心配じゃねぇよ。ここで風邪ひかれて後でグダグダ言われんのが嫌なだけだ!
言い返そうとした時には、臨也は再び寝転がり、寝息を立てていた。
他人がいるとなかなか寝付けない彼にしては随分と早い落ち方だ。疲れていたのかとにじり寄り、顔を覗き込むと眉間に皺が寄っている。
寝てる時にそんな顔するなら情報屋なんてさっさと廃業しちまえ。
臨也が疲れを隠して静雄の前に現れる時、いつも喉元まで出る言葉だ。これを言ったら彼は二度と現れないだろう。だから静雄の中で禁句となっている。
静雄はその寝顔を見ながら、机に突っ伏す。
テレビの付いていない部屋はとても静かだ。
臨也の微かな寝息だけが聞こえる。 隣にいても警戒されずに眠るくらいに自分は臨也にとって特別になれたのだろうか。口では嫌いだ殺すと言いながらも手放せない自分がいる。 後どのくらい時間を共有できるだろう。 いつか、彼のやることを看過出来ずに違う道を行くことになるかもしれない。 それはずっと先のことかもしれないし、もしかしたら明日かもしれない。 臨也はどう思っているか分からないが、そんな日はずっと来なければ良い思う。
遠くで鐘の音がした。時計は十二時を指している。
静雄は寝ている臨也に新年の挨拶をしようと口を開きかけてやめた。今言ってしまったら、臨也が起きている時に言えなくなりそうだったから。
疲れの浮かんだ顔をした臨也を起こすのも忍びないので、静雄は寒いと言っていた彼の心配になるくらい細い体を抱いて自身も炬燵布団に潜る。
目を覚ました彼に一番に今年もよろしくと言えるように。
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