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クリスマスに間に合って良かった。 甘いシズイザです。 うちのシズちゃんはタラシだな。。。 今気付いたけど、うちは静→→→→←臨です。
折原臨也はデスク上の箱を見る。 小さな箱は綺麗な包装紙に包まれ、上品な色のリボンが掛けられている。 プレゼント仕様の小箱。 彼は箱の中に何が入っているか知っている。何故ならこれを用意したのは彼自身だからだ。 クリスマス一色に彩られた街で、偶然ショーウィンドウに目をやった時、それを見つけた。 その瞬間、あ、似合いそうと思って購入した。 いわゆる衝動買いだ。 しかし、冷静に考えて、これをプレゼントするのはどうなのか? プレゼントする相手は平和島静雄。 いくら恋人とは言え、仕事の邪魔はするし、池袋で鉢合わせれば凡そ常識では考えられない物が飛んでくるし、突然来ては人の体を好き勝手弄くり回すし。 そんな関係は高校生の頃から全く変わってない。 かつて、そんな相手を恋人と呼んで良のかと疑問をぶつけたことがある。 臨也は「手前を恋人だと思ったことは一度もねぇよ」か、それに類似した返答を予想した。 嫌そうに顔を歪めた静雄にやっぱりと思ったが、次いで出た言葉に呆気に取られた。 「お前は俺のモンだ」 まさか静雄の口からそんな言葉を聞く日が来るとは思わなかった臨也は表面上は非常に冷静だったが、内心パニクっていた。 つまり、静雄の至極簡単な回答の意味が理解出来なかった。より正しく言えば理解したくないと脳が訴えた。 その結果、「あ、そうなの?」と何とも間抜けな返事しか出来ず、しかも否定もしなかった為、静雄の恋人・臨也と言う構図が出来上がってしまった。 全く持って不本意だ。殺し合いをする相手と恋人だなんて。 殺したい程憎いのも、心底愛しているのも同一人物だなんて、究極の愛みたいで反吐が出る。 臨也はため息を付いてコートを羽織る。箱を目の高さまで持ち上げ、じっと見てからリボンの形が崩れるのも構わず無造作にポケットに入れる。 数歩歩き、ぴたりと立ち止まるとデスクに引き返し、ポケットの中身をその上にやはり無造作に置いた。 今度は立ち止まらずドアまで行く。 「今日は適当に帰ってくれて構わないよ。じゃ、良いクリスマスを、波江さん」 黙々と仕事をしていた波江は初めて書類から目を外した。 閉まったドア、雇い主のデスクの順で見る。 ポツンと置いてけぼりを食らった箱を一瞥すると 「ええ、貴方もね」 と呟いた。
ふらふらと歩くうちに池袋まで来てた。 かつて住んでいた勝手知ったる街に辿り着いた臨也は軽い絶望感に襲われていた。 新宿から池袋まで徒歩で来たとは!!しかも無意識に!!! 冗談じゃない、厄介なのに見つからないうちに帰ろう。 臨也はきょろきょろと周囲を見渡しタクシーを捜す。 しかし、敵(?)の嗅覚の方が鋭かった。 地を這うような声で名前を呼ばれ、再び絶望感を味う。 「シズちゃん・・・今は君とやり合う気分じゃないんだ。もう帰るから見逃してよ。と言うか、普通に帰りたい・・・」 ダメ元で言うと、いつものように公共物が飛んでこない。 奇妙に思って初めて静雄と標識も自販機も持っていない珍しい姿だった。 おやと臨也の形の良い眉が上がる。 「何だ、体調でも悪いのか?」 シズちゃんが俺の心配!? 今度は目が見開かれ、少し幼い表情になる。 体調は悪くない。悪くないがどうしたものかと黙っていると、近づいてきた静雄がじっと臨也を見る。 臨也は居心地が悪くなって目を逸らした。若干頬が赤くなっているかもしれない。 「ちょっと顔が赤いな。さっさと帰って寝ろ。ホレ」 静雄が小さな紙袋を差し出す。 ホレと言われても訳が分からない。 「な、何?くれんの?」 「ああ」 中を覗くと小さな箱。 今日はこの手の箱を良く見るなと思う。 「やる。クリスマスプレゼントって訳じゃねぇけど、たまたま見つけてお前が好きそうだったからやるよ」 「・・・見て良い?」 「あ?帰ってから見ろよ。具合悪いんだろ」 体調不良など一言も言ってないし、貰ったのだからもう俺のものだと、臨也は聞いた意味があるのかラッピングを既に解き始めた。 出てきたのは指輪。 シンプルなそれは本当に臨也の好みのものだった。 「じゃ、さっさと帰れよ」 静雄がくしゃりと臨也の頭を撫でる。 その力に臨也の頭が下がる。 しかし、その頭は静雄が手を離した後も俯いたままだ。 「何だ、本当に具合悪いのか?タクシー呼んでくっから、ちょっと待ってろ」 背を向けてタクシー乗り場の方へ向かう静雄のシャツが引っ張られる。 シャツを掴む細い手を見る。その主は相変わらず俯いたままだ。 「おい?」 戸惑いながら静雄がその顔を覗き込もうとすると益々伏せられてしまう。 今日は珍しく忍耐力を保持していた静雄だが、いい加減イライラして来た。 「手前、いい加減に・・・」 臨也がつっと顔を上げた事でその後の言葉は飲み込まれた。 頬どころか耳朶まで赤く染め上げ、潤んだ目でキッと静雄を睨みつける。 全く、ずるい男だと臨也は心中で呟く。 どうして自分が出来ない事をこんなに簡単にやってのけるのか。 そんな何でもない事みたいにやるなよ。 何て言って渡せば良いか分からなくて悩んでた俺が馬鹿みたいじゃないか。 ああ、ホント馬鹿だ。何で置いて来ちゃったんだろ。 「シズちゃん、この後ヒマ?ヒマだったら家来ない?別にシズちゃん用って訳じゃないけど、ちょっと良いなって思った腕時計があって。 シズちゃん腕時計持ってないでしょ。もし使うならあげても良いけど・・・指輪のお礼に・・・」 尻すぼみになって行く声と共に臨也は再び顔を伏せた。 いつもだったら言葉巧みに言えるのに。 臨也は唇を噛む。 と、強い力で腕を引かれ鼻腔に煙草の匂いが広がった。 目の前にあるバーテン服に抱き締められてる!と気付き、ここが公衆の面前である事に慌てる。 臨也は慌てたが、人々は学習していた。 平和島静雄と折原臨也は犬猿の仲。 一見抱き合っているように見えるが、平和島静雄が全身の力を使って折原臨也の骨を粉砕しようとしているのだろう。 触らぬ鬼神に祟りなし。 群集は見て見ぬ振りをした。 賢明な判断だ。 ジタバタと暴れる臨也を片腕でホールドしながら静雄は上司に電話をかける。 「すいません、今日早上がりを・・・マジっすか。ありがとうございます。はい、また明日」 頭上で交わされる会話に臨也は慌てる。 「ちょっ!シズちゃん、仕事終わってからで良いってば」 静雄はパタンと携帯を閉じる。 「今終わった。トムさんも丁度連絡寄越そうとしてくれてたんだと。それに・・・」 静雄は両腕で臨也を抱き締め、耳元で囁いた。 「そんな顔した手前を一人で帰らせる訳にいかねぇだろ」