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「イ~ザちゃん、お昼一緒に食べよ」 昼休みになると必ずイザちゃんのクラスに行く。 双子の私たちは同じクラスになれないんだから自由時間は有効に使わなきゃね。 イザちゃんは丁度お弁当を広げようとしていた。 グッドタイミング! 「今日は甘楽ちゃんの力作だよ!卵焼きの焼き色なんて絶妙なんだから!」 実際、過去最高に上手く出来たと思う。ふわふわで綺麗な黄色。 力説してると岸谷君が寄って来た。 岸谷君は好き。 イザちゃんの友達だし、好きな人がいるって公言してるからイザちゃんに手を出さなくって安心。 「へぇ、臨也の弁当は折原さんが作ってるんだ。うん、食欲をそそる配色だね」 こうやって誉めてくれるしね。 その後、彼の好きな人が作ったって言うお弁当の話をしていたけど、興味がなかったから無視した。 って言うか、勝手にしゃべらせといた。 3人でお弁当を広げていると、遅れてシズちゃんが来た。 シズちゃんは嫌い。 シズちゃんはイザちゃんが好きだ。 子供の頃からイザちゃんが好きな私には分かる。だから大っ嫌い。 2人はいがみ合ってるのに一緒にいる。イザちゃんに近付かないで欲しい。 でも、イザちゃんがシズちゃんを気に入ってるのも知ってるから表面上は笑顔で迎え入れるけど。 椅子を引っ張ってきてシズちゃんもお弁当を広げる。 「シズちゃん」 イザちゃんがシズちゃんの注意を引いて、その口に卵焼きを入れる。 「あーーっ!!」 イザちゃんの為に作ったのに!シズちゃんムカつく!!って言うか、それ所謂「あ~ん」じゃん! もう色んな事を言いたかったけど、これだけは強く言っておく。 「イザちゃん!!力作だって言ったじゃん!」 「シズちゃん卵焼き好きだし」 「そう言う事じゃなくて!」 「しょっぺぇ」 卵焼きを飲み下したシズちゃんが呟く。 なんつった?この男。私がイザちゃんの為に作ったのを食べた上に文句だと!? 思わず太腿に忍ばせてるナイフに手が伸びる。 「臨也が作ったやつのが美味い」 何であんたが弟の卵焼きを知ってるの?よし、殺す。 ナイフを握る。 「シズちゃんは甘いのが好きだから出汁巻きは嫌いなんだろ?」 そうよ!重要だから何度も言いますけど、これはイザちゃんの為に作ったんだから。 「これはイザちゃんの好みに合わせて作ったの。シズちゃん用じゃないから良いの」 「へぇ、臨也は甘い卵焼きは嫌いなのに作るのは上手いんだ」 岸谷君が余計な事を言ったから、足を踏んづけてやった。ナイフが飛ばなかっただけ有難いと思って欲しい。 つまり、イザちゃんはシズちゃんの為に好きでもない卵焼きを作ったって事だから。 悔しいから意地悪を言う。 「シズちゃんはイザちゃんの好きなものも知らないんだね」 シズちゃんがムッとする。フンだ、良い気味。 「これも食べて」 私はイザちゃんのお弁当箱にミニハンバーグを入れる。勿論、冷凍食品なんかじゃない。 増えたおかずにイザちゃんがため息を付く。 「こんなに食べれないよ」 「ダメだよ。イザちゃんは小食過ぎるの。そんなに痩せてるんだからもっと食べなきゃ」 「甘楽だって痩せてるじゃない」 「私は女の子だから良いの」 「甘楽の言う通りだ」 私たちの会話を黙って聞いてたシズちゃんが珍しく賛同した。 「お前、痩せすぎで抱き」
バンッ!!!
私が机を叩いて立ち上がったもんだから、クラス中の視線が集まった。 男3人は各々自分の昼食を持って引っくり返るのを防止していた。 私のペットボトルのジュースが転がって机に広がる。 「シズちゃん、大っ嫌い」 低い声で罵るとシーンとした教室を後にする。 教室を出た瞬間走り出した。 シズちゃんの言葉の続きなんて聞きたくなかった。 階段の所で荒い息を整えてると、後ろに人の気配がした。 弟だとすぐ分かる。
「私が臨也と姉弟じゃなかったら良かったのに」 本心から呟く。 「例え、姉弟じゃなくても、俺は甘楽を好きになったか分からないよ」 イザちゃんは残酷だ。私には本心を隠さない。 「分かってるよ。そんなのは私が一番良く分かってる」 何年、君と一緒にいると思ってるの?どれだけ、君を見てきたと思ってるの? 臨也が誰を好きかなんて気付かないわけないでしょ? 何で後から来た奴に取られなきゃいけないんだか。 私は振り返って弟の目をしっかり見る。 「私、シズちゃん嫌いよ」 「知ってる。俺も嫌い」 そんな穏やかな目で言われても説得力ないよ。 「戻ろう」 差し出された手を私は強く握った。