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2011 01,27 23:30 |
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これはもう食べ物日記ですね。 茶を出してくれた新羅に礼を言ってカップに口を付ける。
向かいのソファに座った新羅が深いため息をつく。 嫌な予感しかしねえ。きっとセルティがらみだろう。 「静雄、聞いてくれよ!」 嘆く新羅の話を要約すると、ここ数日セルティが外出先を教えてくれないと言う事だ。 セルティにだって仕事があるし、仕事上言えない事だってあるだろう。 しかし、新羅は納得しない。こいつセルティが絡むと人が変わるよな。 「私たちの間に秘密はないんだよ!って言うか仕事じゃないみたいなんだ」 秘密がないと思ってるのはお前だけなんじゃと思うが黙っておく。 「何で仕事じゃないって分かるんだ?」 「手作りのお菓子を持って帰ってくるんだよ。しかも、美味しい!君も知っての通りセルティの料理の腕前は独創的だ。僕はそれも愛してるんだけど」 そう言えば先日クッキーを貰った事を思い出した。 「何だって!?まさか一番に食べたのは静雄なのか!?何て羨ましいんだ!」 話が進まねぇ。喚いている新羅をデコピンで黙らす。 新羅は赤くなった額を押さえながら口を尖らす。 「セルティには悪いけど、彼女一人であそこまでの物を作れるとは思わない。いや、彼女は努力家だから無理とは言わないよ。でも相当練習が必要なはずだ」 初めは親しくしている来良の女子生徒(園原とか言ったか?)と一緒に作っているのだろうと思ったが聞いてもはっきりと答えない。 様子を伺っていると、新宿へ行っている事までは分かった。しかし、誰に習っているのかは分からないと言う事だった。 「彼女はああ言う仕事をしているから僕の知らない知り合いもいると思うよ。私が心配しているのは、彼女に悪い虫がつかないかって事だ。彼女は魅力的だからね!ああ、心配だ!!」 アイツなら大丈夫だろう、お前に惚れ込んでる。と思ったが言わない。 「なあ新羅、臨也なんだけどよ・・・」 「吃驚仰天とはこの事だね!君が臨也の話題を出すなんて!」 イラッとしたから、またデコピンで黙らせた。 新羅は涙目になりながら先を促す。 俺が聞きたかったのは臨也が菓子を作れるかって事だ。 新羅はいない相手を思い出すように宙を見る。 「私は全ての物事においてあいつほど卆なくこなす人間を知らないよ」 臨也からした甘い匂い、指摘した時のはっとした顔、セルティから貰った見覚えあるクッキー。こりゃ決定打だな。 その時、玄関から音がしてセルティが入ってきた。 『静雄も来てたのか。丁度良かった、お菓子があるんだ。折角だから食べて行ってくれ』 そこにはシュークリーム。上手く作るもんだ。 「それ、ノミ蟲と作ったんだろ?」 聞くとセルティは固まった。指先が少し迷った後、PDAに触れる。 『すまない。臨也の名前を聞くと不機嫌になるかと思って言わなかったんだ。でも、教えて貰ったけど作ったのは私だ。臨也は手は出さなかったし』 「別に怒ってねぇよ。新羅がセルティが秘密にしてる事があるって言ってうざかっただけで」 詳しく聞くと、4日ほど前臨也が大きな荷物を持って歩いている所に出くわしたセルティが大変そうだったので手伝いを買って出たらしい。 ヤツは運び屋に運んで貰ったんだから代金を払うと言ったが、セルティとしては大した距離じゃないし、自分から言ったのだからと断ったそうだ。 ふんだくれば良かったのに、セルティって良い奴だな。 運んだものが、小麦粉や卵や生クリームだった為、何に使うのか聞いたら菓子を作るのだと言う。だったら作り方を教えてくれ。それを代金とすると申し出たそうだ。 セルティ曰く、初日は散々だったらしい。 ロールケーキを作り、見た目は大変美味しそうだったのだが、一口食べた臨也は「まずい」と言ってフォークを置いたそうだ。 本当に失礼な奴だ。 生地はパサパサ、生クリームは硬くて舌触りが悪いと散々な評価を受け、明日も来るようにと告げられたそうだ。 翌日は混ぜれば出来るパウンドケーキ。臨也が手本を見せてから作るから時間が2倍かかる。 更に翌日は俺も貰ったクッキー。これは生地を2種類作ったから前日以上に時間が掛かった。 俺は合点がいった。それは臨也が来なかった日の事だ。臨也は来なかったのではなく、来れなかったのだ。 セルティは楽しそうに指を滑らす。臨也は口は出すが手は出さない。最後まで自分でやりなよ、そうじゃなきゃ意味ないだろと言うのだそうだ。 意外だ。まともなことも言えるじゃねぇか。 新羅がシュークリームを摘みながら言う。 「でも何で急にお菓子作りなんて始めたんだろうね?臨也にそんな趣味はなかったと思うけど」 3人で首を傾げながらセルティ作のシュークリームを(二人で)食った。 家に帰るとコンロに両手鍋が置いてある。 中を覗くと大根、こんにゃく、ロールキャベツなどが入ったおでんだった。 アイツ、今日も来たんだなと思い、コンロに火を点けた。 PR |
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